「僕は君たちを憎まないことにした」という本が気になっています。
昨年11月に起きた、130人以上の死者が出たパリ同時多発テロ事件。
著者のアントワーヌ・レリス氏(35)は、このテロでバタクラン劇場にいた最愛の妻を失いました。
しかしながらフェイスブック上でテロリストに「憎しみを与えない」と手紙で宣言。
メッセージは世界を駆け巡り、3日間で20万回以上も共有されることとなりました。
Image: Antoine Leiris/Facebook
以下、少し長いですがレリス氏の手紙になります。
“I won’t give you the gift of hating you” – Antoine Leiris
「憎しみを与えない」 ―アントワーヌ・レリス“Friday night, you took an exceptional life – the love of my life, the mother of my son – but you will not have my hatred. I don’t know who you are and I don’t want to know, you are dead souls. If this God, for whom you kill blindly, made us in his image, every bullet in the body of my wife would have been one more wound in his heart.
金曜日の夜、あなたたちは、私にとってかけがえのない存在である最愛の妻、そして息子の母親の命を奪ったが、あなたたちは私の憎しみを得ることはできない。あなたたちが誰なのかは知らないし、知りたくもないが、あなたたちの魂が死んでいることはわかる。あなたたちは神の御名によって盲信的に殺戮を行なったが、その神が人間をその姿に似せて作ったのだとしたら、私の妻の体の中の銃弾のひとつひとつが、神の心情を痛ませるだろう。
So, no, I will not grant you the gift of my hatred. You’re asking for it, but responding to hatred with anger is falling victim to the same ignorance that has made you what you are. You want me to be scared, to view my countrymen with mistrust, to sacrifice my liberty for my security. You lost.
だから私は、あなたたちを憎まないことにした。あなたたちはそのことを望んだのだろうが、憎しみに対して怒りで応えることは、今のあなたたちを作り上げた無知に屈服することを意味する。あなたたちは私が恐怖に怯え、同じ街に住む人々に疑いの目を向け、安全のために自由を差し出すことを望んでいるのだろう。だがあなたたちの負けだ。
I saw her this morning. Finally, after nights and days of waiting. She was just as beautiful as when she left on Friday night, just as beautiful as when I fell hopelessly in love over 12 years ago. Of course I am devastated by this pain, I give you this little victory, but the pain will be short-lived. I know that she will be with us every day and that we will find ourselves again in this paradise of free love to which you have no access.
今朝、ようやく、何日も、幾夜も待った後に、彼女に会った。彼女はあの晩、家を出た時と同じように美しかった。12年以上前、私が気が狂ったように恋に落ちた時と同じように美しかった。もちろん、私は悲しみに打ちひしがれている。しかしあなたたちのこの小さな勝利は認めるが、それも長くは続かないだろう。彼女はこれからも毎日私たちと一緒にいるし、あなたたちが決して立ち入ることのできない自由な愛の楽園で、私たちは再び出会うのだから。
We are just two, my son and me, but we are stronger than all the armies in the world. I don’t have any more time to devote to you, I have to join Melvil who is waking up from his nap. He is barely 17-months-old. He will eat his meals as usual, and then we are going to play as usual, and for his whole life this little boy will threaten you by being happy and free. Because no, you will not have his hatred either.”
私と息子は二人になったが、それでも世界中全ての軍隊よりも強い。私はこれ以上、あなたたちに構っている時間はない。そろそろ昼寝から起きてくるメルヴィルのところに行かないと。彼はまだ17ヶ月で、これからいつものようにおやつを食べて、いつものように一緒に遊びに行く。この小さな男の子は、生涯、自由で幸せでいることによって、あなたたちを脅かすだろう。なぜなら、そう、あなたたちは私だけでなく、彼の憎しみも得ることができないからだ。
Thursday 19 November 2015, Independent (日本語訳:Sol 訳疲れたよ…)
「憎しみに対して怒りで応えることは、今のあなたたちを作り上げた無知に屈服することを意味する。」という箇所が心に響きます。
テロリストが望んでいることは、怒りの連鎖。
この連鎖に応える限り、永遠にテロはなくならないと感じます。
レリス氏は、毎日新聞のインタビューで、このように語っていました。
「無知から生まれる差別や偏見からテロや戦争が起きる。だから私は教養や文化で戦う。彼らは妻の人生を奪ったが、私たちの魂は奪えない」
(…)「今でも憎しみの感情が私の内面のどこかにある。表に出そうになったら闘わないと」
レリス氏の手紙は、「遺族による投稿は憎しみにあふれた世論に一石を投じた」(同上)とされています。
結局、憎悪や報復は何の問題解決にもならない ことを、この手紙は示唆していると思います。
もしここで、レリス氏が憎しみや憎悪の感情を抱くのならば、息子のメルヴィス君にテロリストの芽を与えてしまうことになるでしょう。
赦せるかどうかではなく、
赦すか許さないか、
その2者択一だということを手紙が教えてくれます。
時代がここで、分かれるとも感じます。
神様をもっと愛する人が 兄弟を赦すだろう。
兄弟の赦しは自分に向けられた赦しであり 自分と兄弟を縛っている 地獄の鎖を解くことだ。 あなたが兄弟と争って その人を見くびって監獄に押し込めると あなたも同じく争いの罪の鎖に縛られて 心情の地獄、生の地獄の中に埋もれるようになる。
争いは人本主義であり 赦しは神本主義、 神に向かう愛によるものだ。
2013-12-28 「争いと和解」より